タグアーカイブ: ショートショート

こめつぶ掌編

新樹の夜

私は確か、ただ昼の遊びがしたかったのだと思う。もちろん家の裏の”秘密基地”に忘れ物をしたということもあったが、本心ではまだまだ森と戯れたかったのだろう。新緑の溢れる森というのは良いものだ。春のどこか重たいけだるさを切り裂くさわやかな風が道を開き、やっと活気を持ち始めた木々が我先に…
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お星さまのはなし

涙に揺れるほし

「じゃ、また明日ね。」 友人たちとの分かれ道。唇をつり上げて、目尻を下げて、一生懸命手を振って。遠くなっていく友人の背から目を離してふと見ると淡い色をして今にも沈みそうな太陽が目に入った。この寒い季節、元気をなくしたかのような太陽はやたら柔らかい。ゆったりと、でも確実に山のほうへ…
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こめつぶ掌編

風邪っぴき。

真っ暗な世界であんずシロップがたんまり入ったスプーンを思いっきりほおばる。上下左右もわからないほどに甘くさわやかなかおりが広がって、痛みに多い被さるようにのどにはねっとりといつまでも存在感を残すようだ。そのときふと遠い日の光景を思い出した。今日のように風邪をひき、あんずシロップを…
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こめつぶ掌編

ねこまふらー

「なみだってなんでしょっぱいんだろうね。おいしくないし、なんだか悲しくなっちゃうあじ。もっとおいしい味だったらもう少し元気もでるだろうに。」 馬鹿だな、涙がおいしかったらきっともっと胸が苦しくなるぞ。 皮肉なほどに星降る夜に、ベランダの隅で泣きながらそう笑う彼女を見て、俺は少した…
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こめつぶ掌編

ジブンモノサシ

気がつくとそこは小学校の一角だった。緑色で少し煤けた滑りにくい廊下と、手洗い場。蛍光灯は時折チカチカとして白い引戸の教室が立ち並んでいる。私は何故ここにいるのか全く思い出せなかったが、不思議と嫌な心地はしなかった。少し歩くとひとつだけ扉が空いた教室がある。なんの部屋かと看板を探し…
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こめつぶ掌編

カボチャの奇跡

聖夜の奇跡、バレンタインの奇跡。なんだか特別な日にしか奇跡を起こしてはいけないみたいで、天使の私としては複雑な心境なのよね。「クリスマスに夢を見せてあげましょう。特別な日なら奇跡が起こってもいいなんて夢見てる人間も、かわいいものじゃない。」って同僚の子は言うけど、私はそんなどうで…
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こめつぶ掌編

胡蝶の夢

『旅人の喉を潤した梅の木の話』 あるところにとても優しく美しい茶屋の娘がおりました。その小さな茶屋は街道のそばにあり、また庭に多く植わっていた梅の木が美しい花を咲かせたので、長旅で疲れた旅人の癒しの場でした。しかし父が倒れ、母が倒れ、親戚の家に行くことになった少女は、家を手放す前…
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作品集

消えゆくコトバの世界

「消えゆくコトバの世界」   pixabayより   人が言葉を捨てた 人が文字を捨てた もうそんなもの使わなくても 意志疎通ができるから でもわたしにはそれができない 風の音がささやきに聞こえて 海の音がうたうように聞こえて 私をひたすら原稿用紙へと ああ …
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こめつぶ掌編

雪の横顔

”雪の結晶はふたつとして同じ形をしているものがない” その一節を読んだとき、なぜかあの人の姿が思い浮かんだ。行きつけの喫茶店で、いつも幸せそうに本を読んでいるあの人。その人とは一度だけ相席をしたことがあって、それ以来顔を合わせたら一言挨拶を交わす程度の仲なのにどうして彼女なのか自…
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こめつぶ掌編

石になったサックス吹きのはなし

ある街角にサックス吹きの男の子がいました。 彼はサックスを吹くごとに身体が石になっていく不思議な体質で、周りの人は彼にサックスを吹かないようによく言っていましたが彼は聞きませんでした。 夕方の端の欄干から川に沿うように流す音色は彼の事情を知らない人でも切なくなって涙を流すほどの美…
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