■今回の例文■

「真空斬!をあらため、”大気より気圧が低め”斬り!」
「いつもより痛くない気がする!うわああああああ!」

 

「真空」という言葉は、聞き慣れてしまうとたいしてかっこよくも思えないのですが、どことなく心惹かれるかっこいい物理用語のひとつです。「物理の実験って地味でヤダー」とのたまう男の子も「真空」という言葉の響きには弱いらしく、真剣に説明を聞いてくれる、そんな言葉でもあります。
ゲームやマンガなんかでも「真空斬!」というような技名の一部として叫ばれたりもしますね。

かまいたちでケガをする理由として「旋風で局所的に真空ができるから」という説が昔ありました。

 

業界によって定義が違う?

真空といえば、「空気も物質も何もない空間」です。
私が物理学科にいた頃、学部必須科目である物理実験には真空に関する実験がありました。

考察まで簡単に説明すると、
①一生懸命ポンプで空気を吸わせて管の中に真空を作ろうとする。
②そこそこ時間をかけてみていざ管内の気圧を計測。
③思ったより真空に出来ていない。
④管の側面への酸素分子の吸着などの要因もあるするから、真空を作るのは難しいんだなあ、とわかる。
というような流れの実験でした。とにかく「まったく空気がない状況」をなんとか再現しようとするけど、「分子レベルで見ると気体は残る」し、「真空を作るには限界がある」し、「それ自体、研究材料になる」ということを、大学生が学ぶわけです。

ちなみに、研究施設の作れる最高レベルの真空状態でもサイコロサイズの中に35個ほどの分子を含みますし、完全な真空を作ることは不可能だと言われているんですよ。

 

そんな折、私は父が上京するとのことで一緒に暮らすことが決定したので、冷蔵庫を新調することに。
その冷蔵庫は野菜室や冷凍室の他に「真空チルド室」があって、肉などの生鮮食品が長持ちしますよ!という宣伝文句が掲げられていました。
父は「すごいな!真空!肉が長持ちするぞ!」と喜んでましたが、真空の実験をしていた私は「真空を作るのは時間もかかるのに冷蔵庫で簡単に出来るわけないじゃんw嘘乙w」と冷ややかだったのです。

しかし調べてみるとこの「真空チルド室」の「真空」は、嘘でも何でもないことがわかりました。工学やさんにとっての「真空」の定義は「大気圧以下の気圧」だったのです。
つまりこの冷蔵庫の「真空チルド室」も「真空パック」も「大気圧よりも低い気圧にできますよ」ということ。
物理学科に在籍していた私には、ちょっとしたカルチャーショックでした。

「え、ちょっと減圧すれば真空作れちゃうじゃん」「というかそれだと山の頂上とか真空になっちゃうのではΣ」ってね。
どうやら「真空」にも度合いの違いがあるようです。

マンガやアニメの「真空斬」も実はちょっと減圧した程度だったのかもしれません……。

 

 

 

 実は仏教用語でもある

ところでこの「真空」、仏教由来の言葉のようです。(だから響きがかっこいいのか!)

広辞苑にも
①真実の空。大乗の究極をいう。
②小乗の涅槃
と書いてあります。なるほどわからん。

哲学的ですが明鏡国語辞典だともうすこしかみくだいて書かれています。
”仏教で、一切の現象は我や実体をもたない全くの空であるということ”
わかりやすくなった気もするけど実感はまったくわかないですね。

 

 

■今回の例文■

「真空斬!をあらため、”大気より気圧が低め”斬り!」
「いつもより痛くない気がする!うわああああああ!」

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