ある街角にサックス吹きの男の子がいました。

彼はサックスを吹くごとに身体が石になっていく不思議な体質で、周りの人は彼にサックスを吹かないようによく言っていましたが彼は聞きませんでした。

夕方の端の欄干から川に沿うように流す音色は彼の事情を知らない人でも切なくなって涙を流すほどの美しい音色だったといいます。

ある日の川辺で女の子がしくしく泣いているのを見かけました。

女の子は緩くむすんだポニーテールを垂らしてしくしくと泣きながら、彼女は音楽を聴くことを禁じられていて、しかしこの川辺で聞こえるサックスの音が好きでたまらないのだと話しました。

「じゃあ僕が好きなだけ聞かせてあげるよ。」

二人はとても仲良くなり、星のきれいな晩はいつだって女の子のためだけに美しい音色を奏でました。身体のほとんどが石化しても賢明にサックスを吹く彼に、ある日彼女が悲しそうに袖をまくります。

「私はね、音楽を聴くと石化する体質だったの…。もう長くはない身だからずっと貴方の音楽をきいていたい。」

これを知った男の子はとても悲しくなってやめたくなりました。けれど二人の身体はもうほとんど動かなくなっていたのです。

「ずっとこうしていたかっただけなのにね。」

夜の河川敷で美しい音色が響きわたります。あまりの悲しく切ない旋律に街の人たちが心揺さぶられて涙を流しながら様子を見に行きました。しかし街の人たちが二人を見つけた頃には、涙ながらにサックスを吹きつつも彼女を思いやる優しい表情をした男の子と、そばに寄り添うように座り、幸せそうに彼を見上げる女の子の石像だけが、秋風にひゅるりとふかれていました。悲しみにくれた街の人たちは、この石像を雑多な街の橋のそばから静かで美しい公園に移しました。その石像のそばでよく耳を澄ますと、今でも時折風の音に紛れて小さくも心を揺らす音の断片が聞こえるといわれています。

 

 

ぱくたそより
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