前にいたバイト先での本当にあった話。なぜかふと思い出したので、「失敗」について考えてみた。

 

科学実験教室でのバイト

私は以前、主に小学生向けの科学実験教室でバイトをしていました。先生としてではなく、アシスタントとして、です。もしもこれを読んでいるあなたが理系の出身なら、大学の実験アシスタントのT.A.(ティーチングアシスタント)を思い出したらいいと思います。仕事内容はまさにTAと同じで、実験前に道具をそろえて準備をし、実験中はやり方がわからない子の指導や、授業を行う室長のアシストをし、実験後の考察(実験結果から分かったことを応用して考えること)で行き詰っている子にヒントを教えたりするんです。実験内容も高校~大学レベルのものが含まれていてる本格的なもの。そのような科学的な内容を小学生にどう説明するのか、どうすれば伝わるかが参考になるので、私にとっても考えさせられることの多いバイトでした。そして、実験が本格的な分、年長さんからアルコールランプを使ったり、高学年は解剖の実験があったりするので、ケガも怖いバイトでもありました。

 

 

「私の息子には絶対に失敗させないで」

そんなバイトをしていた時に、他校で聞いた話がこれなんです。他の校舎である日、生徒さんのお母さまから「私の息子には絶対に失敗させないで」という電話をもらったのだそう。はじめそれを聞いたときは「ケガでもさせてしまったんだろうか」と心配したのですが、詳しく聞いてみると、実験の結果が予想される結果(理論から分かる結果)と違っていたらしいんですね。普通ならAの結果が出るはずなのにBの結果がでた。それをお母さまは、「失敗」だと考えていて、そしてなぜか子どもに「失敗させること」を恐れていて、「息子に失敗させないで」と電話をしたようなんです。

じっくり実験をしていれば、理論(科学的に予想される結果)と違う結果が出るなんてしょっちゅうです。ええもう、しょっちゅうです。というか完璧に理論と同じ結果を出すのは、ほぼ無理です。実験の道具などの条件もあるし、測定できる精度にも限界があるし、考えた実験の方法自体が理論を再現するのに問題があることもある。ましてや小学生に頑張ってもらう実験なので、ボールをそっと転がすにしてもつい勢いがついてしまったり、まだ不器用でテキスト通りにきれいにできないことも多いんです。

だからお母さまのこの指摘は、的外れっちゃ的外れなんです。クレーマーだから気にしない、といえばそれまでです。でも私がそれを聞いて思ったことがあるんです。”この電話をしたお母さまと私や室長の考える「失敗」はベツモノなのかな?”って。

 

 

失敗ってなんだ?

この場合、

お母さまの考える「失敗」は、「理論と違う結果が出ること」。

そして、私の考える失敗は、「教室に来た子どもが実験でケガをすること」です。

きっとほかの人は、また別の失敗を思い浮かべるでしょう。失敗にはいろいろあるし、どんどんやっていい失敗とやってはいけない失敗があるんです。私たち大人だっていろんな失敗をします。子どものころと違って、大人になるとできる失敗も減ってきますね。それでもやはり、”この失敗はあのときやっといてよかった”と思えることも少なくありませんよね。大切なのは、いろんな「失敗」があると認識することなのではないでしょうか?

 

 

考えて、試して、失敗する。まずはそれからだ。

お母さまは、「理論と違う結果がでること」を「失敗」と考えていました。確かに、出るはずの結果が出なかったんだから「失敗」とはいえます。でもこれは、「子どもにさせてはいけない失敗」でしょうか?

実験教室では、実際のやり方を教える前に「この道具でこういうことをやりたいけど、どうしたらできると思う?」という時間をとることがあります。子どもたちは一生懸命理想の結果を求めて道具をいじくりまわしてみるけどできないんですね。ある意味、「失敗」です。「こうやったらできるんだよ。」と教えると、目を輝かせながら真似をして子どもたちの中でそれぞれの「発見」をします。その過程があって初めて、「一生懸命考えてもわからなかったけどこうすればよかったんだ!どうしてこうすればできるんだろう?」とまた考え始めるんです。それが別の時に「あの時はこう考えたらうまくいかなかったけどこうすればうまくいったな」というヒントになります。

実験の方法を教えても、うまくできない時もあります。例えば、コマの実験がしたいのに、まだ幼く不器用なのでデコピンができなかったりするんです。デコピンができなくて、実験ができなくて、泣き出してしまう子もいるんです。泣き出さずに実験自体投げ出しちゃう子もいます。これも「失敗」ですね。そんなときは一旦その子を「そんなことで泣くことないよ。大丈夫。大丈夫。」と、落ち着かせてから、ゆっくりやり方を教えます。そうしてそのうち、できるようになる。授業の時間内では、一応できるようにはなったけどうまくはできない、ということもあります。私はそれでもいいと考えています。この過程を経ることで、「失敗したらどう対処するべきか」を学ぶことができるからです。もし、周りに助けてくれる大人がいるうちに、このような失敗をしておかなかったら?もしかしたら失敗しても泣いてそのままになってしまったり、投げ出してハイおしまい、という子になってしまうかもしれません。

難しめの実験になってくると、実験方法通りにやり通しても、違う結果がでることがあります。これは先述しましたが、理系の大学生でもよくあることです。こういうときは、どうしてそうなったのか、一緒に考えます。本当にこのやり方でよかったのか?どうすればもっといい結果にできるのか?そうして、考える力を身につけていくんです。また、このような「失敗」が、目をそらさずにじっくり突き詰めてみると、実は「大発見」だったなんてことが起こりうるのも科学の妙です。

 

どの失敗も、私はやっておくべき失敗だと考えています。このような訓練を重ねることで、一生懸命考えてみて、試してみて、失敗しても感情に流されることなく次の方法をまた考えて、最後に成功できるようになる力がつくからです。

 

 

怖がるべき失敗もある。しなくていい失敗もある。失敗しないための失敗もある。

よく「失敗を恐れるな」なんて言いますが、怖がるべき失敗もありますよね。私の考える失敗「教室でケガ」もそうです。火を使う実験などはちょっとしたことでやけどにつながりかねないですし、子どもの手は柔らかいのでちょっとしたことで傷になったりするんです。小さなケガ自体は、それもそれで経験なので絶対にやってはいけない傷かは微妙なところですが、少なくとも子どもを預かっているときはさせてはいけないし、大きなケガで科学が嫌いになったり、生活に支障が出たら元も子もありません。

しなくていい失敗もあります。先生の話を聞いてれば失敗しなかったのに……みたいなパターンですね。これは私たちにも言えることで、知識を得ることで避けられる失敗を避けて、少し早く先に進むことができます。

失敗しないための失敗もあります。「この道具はこれくらい乱暴に扱ったら壊れちゃったから、次はもう少し丁寧に扱おう」というものです。ある意味計画的失敗といえるかもしれません。

 

 

失敗すること

このように、いろんな失敗があります。私は、「どんどん失敗しよう」というつもりはありません。ある程度いい失敗と悪い失敗があるからです。そしていろんな失敗があると認識して、失敗をどう扱うかが大切だからです。周りが助けてくれる子どものころはともかく、大人になると失敗の振れ幅も大きくなっていきます。「本当にやってはいけない失敗」もでてきます。なのでやみくもに失敗をすべて恐れるべきでも、失敗しておじけづくべきでもないし、まったく恐れないというわけにもいかないのでしょう。

 

あなたは最近なにか失敗をしましたか?どんな失敗でしたか?

 

(*・ω・)< ちなみに、私のここ最近一番の失敗は、「印鑑ですか?あ、今日持ってますよ!!」といって自信満々に黒い蓋をあけたら印鑑じゃなくて口紅だったことです。シャチハタと口紅は似過ぎなんだ……(遠い目)

 

 

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