「浮世風呂」という本を知っていますか?私も国語辞書をパラパラ読んでいて偶然見つけたのですが、江戸時代に書かれた銭湯に関する滑稽本です。舞台は江戸のとある銭湯。男湯と女湯で、一般庶民の様子や会話がおもしろおかしく展開されていく、そんな本です。銭湯や温泉、江戸が好きな方にはおすすめですよ!

 

 

「浮世風呂」について

「浮世風呂」は、江戸時代後期に式亭三馬が書いた滑稽本です。江戸っ子の風呂好きは有名ですが、銭湯(江戸でいうところの湯屋)は大切な社交場でした。当時の江戸の一般的な家にはお風呂はなかったので、共用の風呂場としても機能していましたし、そのためいろんな出身地の人、仕事の人、事情を抱えた人が集まる場でもあったのです。

そんな銭湯に集まった一般庶民がおりなすおもしろおかしな日常を描いたのが、「浮世風呂」なのです。

 

 

式亭三馬について

式亭三馬は、江戸時代後期の戯作者です。代表作には、「浮世床」、「浮世風呂」があります。

同時代に肩を並べた人気作家には、「東海道中膝栗毛」の十返舎一九がいます。

私は、式亭三馬の「浮世床」と「浮世風呂」も、十返舎一九の「東海道中膝栗毛」(こちらは現代語訳版)も読みました。お2人の違いを言えば、式亭三馬は「日常に即した面白さ」、十返舎一九は「日常を忘れる面白さ」が魅力。現代でいえば「よつばと!」と「ワンピース」のような感じでしょうか。気分でいうと「あ~、毎日が楽しくなるといいなあ」なら式亭三馬、「あ~こんな生活離れてハワイ行きたいな~」なら十返舎一九。どちらも当時の人気作家だっただけに、軽快で楽しく読めますよ!

個人的には、文章で日常を表現するのが好きなので、式亭三馬先生のほうをリスペクトしています(´ω`*)

 

 

全体の魅力

・発音へのこだわり

「浮世風呂」内に実際にあった表記ですが、どう発音するかわかりますか?

1.「さ゜」

2.「か゜゜(゜は雨粒のようなカタチ)」

正解は

1.「さ゜」……つぁというの発音。よくある「おとっつぁん」の発音

2.「か゜゜(゜は雨粒のような形)」……「が」の発音の前にnの発音が入る。んが、英語の「ng」に近い。

どうして浮世風呂ではわざわざ「おとうさん」や「が」と書かずに、わざわざこのような表記をしたのでしょうか。それは式亭三馬が、文字のできる範囲で”方言”や”なまり”をよりリアルに表現しようとした結果なのです。多くの人が出稼ぎに出た江戸です。色んな出身地の人、いろんな方言をしゃべる人がいました。そんないろいろな言葉が飛び交う、実際の銭湯でのおしゃべりの様子をよりリアルに細かく表現したのが、この表記なのです。作中には東のしゃべり方と西のしゃべり方を互いにけなしあうようなシーンもあります(笑)

余談ですが、式亭三馬の発音や口語表現へのこだわりが大きかった結果、「浮世風呂」は当時の口語表現を残した資料としても貴重なものとなっているようです。

 

・言葉遣いが軽妙

これはさきほどの口語表現へのこだわりに近いものがあるのですが、「浮世風呂」の語り口、セリフは落語調ですごく軽快です。だからテンポがよくて楽しく読めるんです。(ボキャブラリーも豊富すぎるくらい豊富なので、修飾語などで正直よくわからない単語もあるのですが…)滑稽本は、当時落語とも深く影響しあっていたので、落語のようなテンポとしゃべりの面白さに通じるものがありますよ。

 

・日常に寄り添った内容

式亭三馬の特徴であり、同時代の代表作家だった十返舎一九との大きな違いが、「日常生活の描写への忠実さ」だと思います。それは「浮世風呂」にも存分に活かされています。歴史の教科書に出てくるのは偉い人ばかりで、実際にその時代に生きていた人の大部分であるはずの庶民は見逃されがちです。そんな庶民の暮らしがよくわかる、という点でもこの本は興味深いですよ!

 

・旧かな遣いや表記に慣れてしまえば意外と読みやすい

「浮世風呂」は、口語表現、つまり話しことばで書かれています。書かれたのは江戸後期なので、現代の口語に近い部分も多く古文の中ではかなり読みやすい部類にはいります。個人的な印象だと、明治期などに書かれた擬古文(古文に似せて書いた格式高い文章)よりもよっぽどわかりやすいです。もちろんどうしてもわからない言い回しや単語があるのですべてすらすら読めるわけではありません。また、先述のように発音を忠実に再現した表記もあるので、旧かな遣いや表記に慣れるまでは少し大変かもしれません。でも、大体の内容を追って内容を楽しむには、(古文の中では)かなり読みやすかったです。

 

(*・ω・)ノ<「浮世風呂」は、私が一時期ペンネームにしていたほど大好きな本です。私にとっては、つらいことはいろいろあるけど全部笑い飛ばしてくれるようなパワーのある本です。なので、書きたいことはまだまだまだまだあるのですが、とりあえず「浮世風呂」がどんな本なのかの紹介だけ書いてみました。読んだら銭湯や江戸時代の日常がいとおしくなるよ!

 

 

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