花便り

今日、
貴方が植えた薔薇の新芽が出てきていました
小さくてあおくてとても可愛いです

今日、
葉っぱが少し大きくなりました
希望と幸福が詰まったような快活さで
とても愛らしく、このままの姿でいてほしいような
早く咲いてしまってほしいような不思議な気持ちです

今日、
茎の棘がだいぶ強かになっていました
すこし怪我をしてしまったけれど
貴方の植えた木が育っている証だから
私は平気です

今日、
ふたつ並んだ、小さなつぼみができていることに気がつきました
うれしくて貴方を探し回りましたがみつかりませんでした
はやく見せたい、みせたいの。

今日も、
つぼみがどんどんふくらんでいきます
気持ちばかりがふくらんで、追いやられた心が
貴方と私の居場所をさがしてる

今日、
つぼみのひとつがくさっていました
長い雨のせいかしら
もうひとつのつぼみも朽ちてしまうのかしら
はなの一つも残してくれないなんて
嗚呼ひどい人 貴方はひどい人

今日、
薔薇の花がひとつ咲きました
耳をすませば
貴方の吐息が聞こえてきそうです
そう想ってまたひとり
追いつめられていく
私のささやきはどうすれば届きますか

今日、
花弁のふちがかわいていました
渇いて、渇いて、色あせてしまうくらいなら
この薔薇の花と一緒に
貴方に逢いにいってしまおうか

今日、
花びらを二枚引きちぎってめちゃくちゃにしたら
でも、それ以上はできませんでした
貴方を失った慟哭を糧に育ったこの花は
すべて見透かしたように咲いて私を捉え、
残酷なまでに貴方に似ているのです

今日、
貴方の薔薇が枯れました
あんなに手入れをしたのに
あんなに大切に想っていたのに

けれど私にはわかります
枯れてしまったことが貴方のやさしさ
枯れてなくなってしまうことが貴方のやさしさ
そんなやさしさいらないのに、と
昔の私なら泣いて怒っていたでしょうね

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