しぐれ

しぐれ
しぐれ
聞いておくれ
わたしは
ねむれなかったわけではないのです
わたしは
結局眠ってしまうのです
でもね
しぐれ
ひとたびあの人のことを夢にみると
悪夢でもないのに目が覚めてしまうのです
起きてしまうと もう眠らない
ただただ朝を待つだけ
あの人を待つだけ
しぐれ
あの人は今どこにいるの?

「しぐれに寄する抒情」  佐藤春夫

しぐれ
しぐれ
もし
あの里を
とほるなら
つげておくれ
あのひとに
わたしは
今夜もねむらないでゐた――

あのひとに
つげておくれ
しぐれ

 

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